冠着山の十三仏を復元

 文・千曲市羽尾5区在住の冠着山十三仏保存会事務局長、上水清さん、さらしなの里友の会だより26号=2012年春=から、写真は十三仏の最初の仏の不動明王のお魂入れの儀式。死後最初の審判、初七日に現れるのが不動明王で、左奥に釈迦如来、文殊菩薩の岩が続く 

おたまし入れ2samuneiru 冠着山に十三仏(じゅうさんぶつ)という信仰空間が、かつてあったことが明らかになりました。明治時代の地図の、児抱岩と坊城平との間の谷筋に、「十三仏」と明記されています。十三仏は死者が冥途への途中にかけられる回忌ごとの審判(裁判)の弁護士のような立場の仏様のことです。昔の人達は自然や神仏との一体感が強く、神仏に畏敬の念と強い信仰心を持っていたので、そんな時代に崇拝されていたものと思われます。
 「十三仏」の下には坊城平があります。坊城平という地名には修験者の修行の拠点という意味合いがあります。児抱岩の周辺に鎖場があったことを記憶している人もいますので、坊城平から出発して十三仏を拝み、児抱岩の鎖場を登って冠着山の頂上に至るルートはかつての修験者の修業の場であった可能性もあります。しかし、この十三仏は、時代が変わり、お守りする人がいなくなったため、自然の中にお隠れになってしまいました。
 復元と保存の機運が地元の有志によって盛り上がったのは昨年、地元の文化団体「更級人風月の会」の特別企画「冠着山の十三仏探訪」の実施がきっかけでした。そして、今年になって、「冠着山十三仏復元と保存の会」が結成され、5月19日には復元活動が行われました。この山は、地元財産区の管理下にあり、地元住民の入会山でもありますので、財産区の委員さんや地元区民を代表する区長さんにも立ち会っていただきました。児抱岩周辺の地形的特色を活かして、突起した十三の岩をそれぞれ仏様に見立て、仏名を標記し、僧侶による魂入れ、という方法で行いました。
 復元された十三仏は、坊城平の鳥居から冠着山頂への登山道を百㍍ほど進んだ左側にあります。設置した「冠着十三仏」の標識から少し入った所に、一番目の不動明王の岩があり、頭上には児抱岩が見えます。これからは登山者を見守ってくださるものと思われます。法要の際の弁護の嘆願に訪れる人も現れるかもしれません。さらしなの象徴たる冠着山に、これから多くの旅行者や登山家が訪れることでしょう。その時、この十三仏が癒しの拠り所となり、現代風に言えばパワースポットとなることを期待してやみません。