日本人は元来、澄みきったものを好みますー安田靫彦さんの美意識とさらしな

 NHK日曜美術館のタイトルに「澄みきった古(いにしえ)を今に刻む」(5月1日放送)という言葉を見つけ、見ました。1978年に94歳で亡くなった日本画家の安田靫彦(ゆきひこ)さんの特集。安田さんは万葉歌人の額田女王(ぬかたのおおきみ)や豊臣秀吉など歴史上の人物をたくさん描いたことで有名です。その安田さんの美意識に焦点を当てた内容でしたが、安田さんの生涯を知り、さらしなが都人の大きなあこがれになった理由をまた一つ手に入れた感じです。
 番組は「日本人は元来、調子の高い澄みきったものを好みます」という安田さんの言葉をクローズアップしていました。古代の都人たちの澄みきったものを尊ぶ精神性を強く感じた安田さんのこの認識は、法隆寺の仏教壁画の模写の体験が背景にあるようです。この仏教壁画は戦後の火事で焼失してしまたのですが、その前に安田さんたちが模写を残していたことなどから、再現できました。安田さんが残していた模写が上の観音菩薩像の図です。輪郭を一本の線ですっとゆるぎなく引いていいます。日本画の大きな魅力は輪郭などの線がありますが、安田さんは特にその線に「調子の高い澄みきったもの」を感じ、その感覚や美意識を絵画に表現したようなのです。
 東京国立現代美術館で行われている安田さんの作品展覧会に合わせた番組だったので、これも見に行きました(上に展覧会チラシ)。番組のトーンに引きづられないようにと見たのですが、「調子の高い澄みきった」空気を確かに感じました。特に源頼朝と義経が兄弟として初めて出会った時の逸話をモチーフにした「黄瀬川陣」(展覧会チラシに掲載)。
 安田さんについての情報をさらに集めていると、ノーベル文学賞を受賞した川端康成さんとの深い交流があったことを知りました。そのことを特集した本「大和(やまと)し美(うるわ)し 川端康成と安田靫彦」(求龍堂)には、二人の間で交わされた手紙や美術品についての思索が紹介されています。川端さんが太平洋戦争での敗戦が確実になっていくとき、日本の美の伝統のために生きることを決意したことも知りました。その大きな成果が代表作「雪国」です。「雪国」には日本人が白という色に寄せてきた美意識が濃厚に盛り込まれています。「調子の高い澄みきったもの」を描き続けてた安田さんと川端さんが交流を深めたのは、日本の美をつきつめる同じ志を持っていたからだと思いました。
 安田靫彦さんの展覧会は終了しましたが、ホームページはまだ見ることができます。http://yukihiko2016.jp/ 川端さんの白色に寄せた美意識につては更旅236号 http://www.sarashinado.com/2014/09/06/kawabata/もご覧ください。