132号・すずき大和先生のまんが「月の都」ワークショップ

 「月の都」としての当地をまんがで描いたらどんな世界が現れるか。千曲市の観光キャッチフレーズ「芭蕉も恋する月の都」を考案した漫画家のすずき大和さんによる「月の都・まんがワークショップ」が計5回の連続講座としてこのほど開かれました。主催は千曲市ふるさと漫画館、千曲市文化振興事業団、千曲市教育委員会。小中学生4人と大人8人が受講しました。
 中秋、姨捨駅で
 私も講座のお手伝いをしました。特に力を入れたのが今年の中秋、9月22日に現れる月をJR姨捨駅で見ることでした。千曲川を挟んで向かい側の鏡台山から顔を出した昨年の中秋のすばらしい月(シリーズ104参照)が脳裏に焼きついているので、ぜひ当地の本物の月を、子どもたちに見てほしいと思いました。全身で「さらしな・姨捨の月」を味わってほしいと思いました。
 ワークショップ(WS)は8月下旬から10月下旬にかけ原則、日曜日にふるさと漫画館での開催だったのですが、9月22日は水曜で平日。翌23日が秋分の日で休日だったため、この日にしようかとも考えましたが、松尾芭蕉をはじめ、古来、各地の人が当地の月を見にやって来る日だった中秋の日をあえて選びました。国立天文台の予想によると、鏡台山付近からの月の出は午後5時15分ごろ。受講者はまずふるさと漫画館に集合し、マイクロバスで姨捨駅に向かいました。平日の夕方にもかかわらず全員が参加、子どもたちもみんな来てくれました。
 かつて駅事務所だった部屋を地元姨捨地区のみなさんが週末、来訪者のガイドをボランティアでする拠点に改装した「くつろぎの駅」で座学をした後、これもJRが崖側のホームに新たに作った展望台に移動し、月の出をみんなで待ちました(左下の写真)。しかし、鏡台山の山頂には雲がかかっています。雲の流れが速いので、いずれ…と期待しましたが、結局、月の出の時刻になっても晴れませんでした。
 出るか出ないかみんなで話題にしているうちに、更級地区(旧更級村)の音楽グループ「棚田バンド」のみなさん(詳しくはシリーズ104、118、126など参照)の演奏が始まりました。メンバーのみなさんが仕事を早めに済ませ来てくれました。「野に咲く花のように」「カントリーロード」など、おなじみの曲のほか、新曲「さらしな月見歌」も披露してくださいました。節回しが楽しく、子どもたちも大喜びでした。
 そしてすっかり闇夜になり、最後の「さらしなの里ここにあり」(この歌についてはシリーズ61参照)の演奏が終わった後、上空を見上げると、雲間に丸い月が顔を出していました。思わず「出た!」と叫んでしまいました。わずかな時間でしたが、確かにお月見ができました。演奏が雲を吹き飛ばしたのか、それとも姨捨駅が音楽と人間であんまり楽しそうなので「何事か」とお月さんが雲を掻き分けたのか。
 子どもと大人のコラボ
 ワークショップの別の回についても少し。受講生は主催者からスケッチブックを一人ずつ用意してもらっており、自分がイメージする「月の都」のイメージを描き付けました。私も一冊もらいました。刺激的だったのは、自分の絵をみなさんに披露し、みなさんがどれが好きか、どういうところが好きかを述べ合ったことです。そんな月の世界、そんな月の味わい方もあるのかと感心しました。
 「描いたものは、たくさんの人に見てもらうと、頭が柔らかくなります」「きれいなこと考えていると、こういう絵が描けます」とすずき大和先生。笑いも絶えない講座でした。子どもと大人が一緒のワークショップということで、最初はどうなるか心配でしたが、描かれた絵について、そんな見方、視点もあるのかとかえって新鮮な発見がありました。女性は色をつけるけれど、男は黒一色という違いも興味深かったです。
 多い人は十枚以上、描いていましたが、最終的には一枚だけ選んでもらい、自分で額に入れました。千曲市ふるさと漫画館に2011年3月まで展示されています(最上部の写真)。それぞれのタッチで、それぞれの月の都が出現しています。

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