すると、穴は破壊された壁のすき間で、向こうには戦争映画でよく見るヘリが飛んでいます。その下には建物が焼け落ちたような黒いもの。冠着山の周りは青空で昼間の景色ですが、円い月が浮かんでいます。ヘリは空の月も撃ち落とそうとしている? ありえないことですが、壁にもたくさんの傷やひっかきがあります。
この企画展は、アートを通じて出会った生徒と教師たちの作品を紹介するもの。「冠着山」の絵は、出品者それぞれが千曲市をテーマにそれぞれが作った作品のコーナーにありました。作者は屋代南高校美術教諭の長門裕幸さん。
ほかの展示作品を含め、長門さんの作品には、時代や地域、社会、世界に向けたまなざしを濃厚に感じました。
「冠着山」の制作は「2023年」とあるので、日本遺産「月の都」やウクライナ戦争も背景にあったと察します。「月の都」にも「戦争」の空気や気配が漂い、流れ込んではいないか。いつまでも「月の都」でいられるのだろうか…。きれいでかっこいいけど、怖い作品でした。