ゾクゾク感とさらしな

 美術館で作品を見ているとき、見終わったあとに感じる「すがすがしさと躍動感」を自覚して5年くらい。これは「さらしな」という地名の響きと同じだとわかったのですが、これに「わあすげえ」という「ゾクゾク感」も加えたほうがいいと思うようになりました。
 それを特に感じた一つは、東京六本木の森ビルであった村上隆さんの「五百羅漢図展」。東日本大震災の惨状を知った村上さんがアーティストとして何ができるのかを考え取り組んだ作品。ブッダの弟子である500人の羅漢を縦3m、横25mのボード4枚に描き、全長100mに仕立てました。写真撮影もOK。大きいサイズの絵画はたくさんありますが、なんでこんな大きさが必要なのかと思うものがたくさんあります。しかし、五百羅漢図はその大きさと図柄の面白さに圧倒されます。村上さんは日本のアニメや漫画の文化の成長と同じ時代を生き、日本画という日本の伝統芸術を学んだその成果を、この作品に結集させたということを言っています。世界で勝負するには、なるほど。自分も村上さんと同じ世代。
 ゾクゾク感を感じたもう一つは国立西洋美術館のカラバッジョ展。人物、物のたたずまい、存在感のすごみ。闇の黒にやられているのかと疑ってみますが、それでも黒色にそうした役割があることがはっきりわかります。さらしなの月にもこれと同じような体験をした人が昔からたくさんいたかもしれません。
 ゾクゾク感とは、見たことがなかったものへの驚き、感動。美術館を出たあとは血液の流れが良くなっているのを感じます。少々の若返り。ここにもさらしながあったと思うときです。清々しさ・躍動感とさらしなの関係は更旅226号もごらんください。