134号・鏡台山から見た冠着山(姨捨山)

 ここに掲載した写真は、鏡台山から冠着山(姨捨山)をまん中にして撮影したものです。鏡台山は、中秋には月が北と南の峯の間の窪みから阿弥陀如来のように姿を現すこともあり、「さらしな・姨捨」での月見には欠かすことのできない山(シリー99、104参照)です。
 その山から逆に、「さらしなの里」がどう見えるか知りたかったのですが、この写真で分かりました。千曲市更級地区(旧更級村)在住の森政教さんからいただいた2011年の年賀状に載っていたものです。森さんの許可をもらい掲載しました。
 峯で鍋を囲んでいたら
 昨年の紅葉期の11月7日、森さんが山好きの仲間たちと登ったとき、携帯電話のカメラ機能を使い撮ったものだそうです。森さんたちは毎年、鏡台山登山をしているのですが、昨年は天気が良くお昼ごろに南峯(1269㍍)に到着し、鍋をやって食べました。沿道で取ったキノコも入れてゆっくり楽しんでいたら午後3時ごろになり、この光景が現れました。
 中央、尖っているのが冠着山。後方の山並みが北アルプスで、冠着山の右側に日本で五番目に高い槍ヶ岳(3180㍍)も見えます。手前左のこんもりした峯は五里ヶ峯です。シリーズ99で掲載した西沢保雄さんの写真はこの山の峯から撮影したものです。
 千曲川が流れる平地に暮らしていると、冠着山は威容を示してはいますが、山並みを構成する一山という感じです。しかし、こうしてみると、「孤高の山」「名誉ある孤高」という感じがします。この風景も踏まえ、冠着山に「姨捨山」の異名が定着していったかもしれないとも思いました。
 古来、日本の山岳地帯で盛んだった修験道に精進する山伏など、昔は山の尾根や峯を通って移動する人たちがたくさんいたので、鏡台山に登った人は、「あの尖った孤高の山はなんだ」「なんという名前だ」と立ち止まり、人が集まれば話題する、とても気になる山だったかもしれません。
 偶然の重なりで「更級の光り」
 この写真で、もう一つ面白いのは冠着山の右下、蛍の光りのように、ピンク色の光が放たれている部分です。森さんによると、この写真を撮った午後3時ごろ、羽尾地区辺り(旧更級村)が一瞬だけ、このように輝いていたのだそうです。
 どこかのお宅の屋根かビニールハウスではないかと森さんは言います。太陽が冠着山の後方にあるように逆光気味の写真に見えるので、それはありえないのではとも思ったのですが、実際は、太陽光を浴びた羽尾地区からの反射光が、鏡台山の峯に届く位置関係にあったということだそうです。森さんは「偶然の重なりがつくり出した神秘的な光景」とおっしゃいます。
 森さんは、更級地区の音楽グループ「さらしな棚田バンド」のメンバーであり(シリーズ61、104など)、さらしなの地酒づくり(同117)にも取り組む方です。写真撮影もお好きだそうです。この写真で見せていただいた「姨捨山(冠着山)と太陽」という組み合わせも新鮮で、「姨捨山の初日の出」を拝ませてもらった気分です。

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