更旅204号・さらしな姨捨の白い月

更旅・月が白い訳samuneiru シリーズ161号で古代の都人は月の色を白のイメージでとらえてきたことを紹介しました。その後、月の地平線から上る美しい地球の姿の撮影で有名になった日本の月周回衛星「かぐや」が明らかにした成果などを調べ、月の光はそもそも白色であることを知りました。
 月は太陽の光を受け、反射光を地球に届けています。太陽の光は「白色光」といわれるようにより白に近い色です。月の表面の多くが斜長岩(しゃちょうがん)と呼ばれる白っぽい岩石と砂で覆われているので、ほぼ太陽光の色をそのまま反射していると考えられるのです。(餅つきをしているウサギの部分は黒っぽい玄武岩ですが、黒は光を反射しません。つまり、ウサギの模様は太陽光の反射率の差からできています)。確かに月面着陸したアポロ宇宙船の映像を見ると、月面は砂地で、まぶしいほどに輝いています。この砂は宇宙から飛んできた隕石が斜長岩に衝突し、斜長岩が砕け散ったものが大半だそうです。
 とはいえ、月が黄色く見えるのは事実です。地球の大気中に漂う極小の塵や水蒸気が関係しています。太陽の光は分解すると虹の色にあるように、実は紫から赤まで7つの色の電磁波で構成されており、波長の短い紫など青系の色は塵などにぶつかって散乱してしまい、私たちの目には届きません。届くのは波長の長い黄色系の色であるため、月は黄色く見えるということです。しかし、空高いところにある月は比較的い白く見えます。これは光が通過する大気層の距離が関係しています。上の図をご覧ください、真上にある月の光が通過する大気層は、地平線など出端の月の光が通る大気層より薄くなるため、もともとの太陽の光である白色光に近くなるのです。日中の月が白いのは、周囲の空の青色が散乱した青系の光の色を補い、結果的に白く見えるということです。 
 夜、特に夏に現れる月は赤みが強く大きくみえるため月は黄色のイメージになっても不思議ではありません。古代の都人は月を出端から明るくなった西の空に沈むまで眺めていたし、大気が澄み色が白くなる秋の月が好きだったので、月の色は白であるととらえるようになったのかもしれません。
 左下に掲載した月の写真は2009年の中秋、当地の鏡台山から上った満月です。当地の中秋の名月は、まだ日中の光が残る夕方に現れることが多いのが特徴です。見え方が刻々と変化する月と里の景色のコラボレーションが醍醐味(シリーズ104など参照)です。今号では、JAXA(ジャクサ、宇宙航空研究開発機構)のホームページやNHKブックス「最新・月の科学」、中公新書「自然の中の光と色」などを参考にしました。JAXAは打ち上げの直前中止でさらに話題になった日本の次世代新型ロケット「イプシロン」の開発に取り組む組織です。画像をクリックすると、PDFが現れ、印刷できます。