更旅232号・2014年の冠着ヒメボタルの報告です!

更旅232・2014ヒメボタルsamuneiru

 この写真は2014年の夏、長野県千曲市の冠着山(1252㍍、別名・姨捨山)頂上で舞ったヒメボタルです。ヒメボタルは山林の湿った場所に生息するホタルで、絶滅が心配される希少種です。そのホタルが毎年7月、さらしなの里のシンボルでもある山の頂に現れていることをシリーズ97103202号で紹介してきました。
 毎年7月、頂上にある冠着神社の社殿を拠点に、冠着山のふもとの住民有志の主催によるヒメボタル観察会が行われており、ことしは25日夜にありました。その際、松本市でホタルの保護観察活動をしている「庄内ほたると水辺の会」の後藤和敏さんが撮影したのがこの写真です。時間をずらして撮影した画像を重ねる多重露光という手法でつくったものです。
 ヒメボタルの明滅は、水辺に住むホタルと比べると、金色に近い光の明滅が、短い間隔で繰り返されるため、長時間露光で撮影すると、このように光の粒の集まりの写真になります。水辺に住むホタルの光は緑色がかり、明滅の間隔が長いので、光の粒ではなく、光の線の集まりになり、このような写真はヒメボタルでしか撮れないそうです。レンズに光を入れて15秒後ごとにシャッターを切る作業を約2時間続け、約500枚のカットを重ねあわせたものがこの写真だそうです。
 宙を舞えるのはオスだけ。明滅を繰り返しながらメスを探します。肉眼では数えられるくらいの明滅ですが、2時間という時間の流れを、まぶたを1回とじるくらいの時間に集約すれば、このような世界が目の前に広がっていることになるわけです。地球の長い歴史の時間を生きているヒトがもしいれば、そのヒトの目にはこのような光の光景が映っているかもしれないと想像しました。

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