「よその子もうちの子も」親子登山

  文・千曲市仙石区の島谷守さん、さらしなの里友の会だより29号=2013年秋=から

親子冠着・集合samuneiru 平成17年5月28日、「更級小学校おやじの会」の主催で「親子冠着山登山」を実施しました。「地域の子は地域で育てる」をテーマに更級のシンボル冠着山に親子で登って楽しもうと計画しました。参加者は小・中学生、幼児、保護者、先生、地域の方々など45名。更級小学校に集合し、車で坊城平に移動し、新緑の木々に囲まれた登山道をゆっくり登りました。
 今は亡きさらしなの里の郷土史家、塚田哲男さんが子や孫と親子3代で参加して、冠着山の歴史や児抱岩などについて、詳しく説明してくれました(上の写真、木の下で帽子姿が塚田さん)。同行した自然観察インストラクターから、ニリンソウ、ハナイカダ(山野草)、ウスバシロチョウ(蝶)、オオルリ(野鳥)、ハコネサンショウウオ(両生類)など多くの動植物の説明があり、親子で興味深く聞きました。休みながらゆっくり登りましたが、汗だくになって子どもをおんぶして登っていたお父さんの姿が、今でも目に浮かびます。
 頂上でゆっくり遊んでから下山し、坊城平でお弁当を食べました。有志のお母さんが、前日から準備してくれた熱々のトン汁がふるまわれ、大人も子どもも「おいしい、おいしい」と何杯もおかわりして食べていました。
 「親子冠着山登山」は平成17年以降、毎年実施していますが、平成19年には、信濃毎日新聞の特集「民が立つ」で1面に写真入りで取り上げられました。その年はコースを外れるハプニングもあり、児抱岩の上側の岩を登ったり、やぶの中を歩いたり、苦しい場面もありましたが無事に登頂できました。
 夕方有志で行った慰労会場の仙石公民館では、大人たちが酒を酌み交わす横で、小学生が顔を突き合わせて遊んだり、近所の中・高生もやって来たり、モツ煮を運んできた小学生が、大人の会話に割って入っていました。「よその子もうちの子も、みんなで育てるのがいい」と、大人と子どもが交じり合うにぎわいを見て確信しました。
 今年は、周辺整備され看板も設置された「冠着十三仏」を通過するコースを登りました。冠着十三仏について、上水清さん(羽尾5区、更級人「風月の会」事務局長)から説明していただき、十三仏のさらに上にある「浄土岩」の上では、さらしな棚田バンドによる「冠着十三仏の歌」の演奏がありました。この神秘的なスポットでは心がいやされ、登山の喜びとともに、幸せな未来につながるエネルギーをもらいました。今後、冠着十三仏は、更級のパワースポットとして有名になるでしょう。4年前からは、頂上でお弁当を食べた後、上水さんの指導によりコマ回しやくぎ刺しなど、昔の遊びを楽しんでいます。
 このように、お父さん、お母さん、先生、地域の皆さんなど、多くの人たちの関わりで、「親子冠着山登山」が継続されています。
 「おやじの会」は決して義務感でなく、楽しみながら一人ひとりが地域のためにできることをやっています。その積み重ねとつながりを地域の中に築いていき、更級の素晴らしい歴史や文化が次世代に引き継がれていくことを願っています。