花を見ると「胸がすく」ー白洲正子さんがさらしなに来たら…

 録画しておいたBS朝日の「エコの作法」という番組で、1998年に88歳で亡くなった文筆家の白洲正子さんを紹介する番組を見ました。「日本の美」を独自の文体と暮らしぶりで表現してきた白洲さんのエッセーは今も人気があり、平安時代に一本のケヤキから彫り出した当地・上山田の智識寺の十一面観音菩薩も見に来ているので、関心がありました。
 番組は白洲さんと親交のあった川瀬敏郎さんという華道家が、白洲さんの美意識を振り返る内容。白州さんが晩年、東京はずれの農村で買い求め、終の棲家とした家で収録。周りには季節の草花がたくさんあり、集めていた古い美術品の器に生けて楽しんだそうです。番組で特に記憶に残ったのは、花を生けた後、白洲さんがいつも「胸がすく」と言っていたということです。
 白洲さんが「武相荘(ぶあいそう)」と呼んでいたこの家は現在、公開しているというので見に行きました。豪農の屋敷をイメージしていたのですが、どちらかというと普通、質素。丘の斜面なので眺めは良かったと思います。周辺は今、宅地になっていますが、起伏が多く川も流れているので、いろいろな草花が見られたでしょう。そうした草花とともに「胸がすく」暮らしを送っていたわけです。
 「胸がすく」の「すく」は漢字では「空く」と書くそうです。空のように開放的に、すっと、さっぱりしたという心持ち。すがすがしさと躍動感です。白洲さんが、今のさらしなの里に来たらどんなエッセーを書くか。(智識寺の十一面観音菩薩については更級への旅244号もどうぞ)