口ずさみたい嘆きの歌 2

家族みな子どもにかへり秋の日を子どもどうしで遊んでみたし
小島ゆかり

 一緒に遊ぶことができて楽しい子育ては、子どもが小学生ぐらいまでなので、わずか10年。過ぎてみれば、なんて短い時間だったのかと多くの人が感じていると思います。

 作者はそのかなしみの中で、自分を子ども時代に戻し、産んだ子どもたちと一緒に遊ばせるという不可能な世界を想像しました。夫も子どもに戻っています。わたしには葉っぱの色づいた山の広場で一本の縄を張ってみんなで縄跳びをしている光景が浮かびました。

 子ども時代に戻った親は、見た目はわが子と同じでも、考え方は30年近くの差があります。そんな子どもたちが仲良く遊べるだろうか。親の立場で小言を言っている変な子どもかもしれない。それでもあのころの子育ては楽しかった…。

 「子育てはもう二度とできない」と嘆くだけでなく、その嘆きを現実にはありえない不思議な世界を創造して口ずさみたくなる短歌に表現したことで、子育てという営みの楽しさ、尊さが深く伝わってきます。

 作者は短歌結社「コスモス短歌会」の同人誌「コスモス」編集人。歌集「雪麿呂」収載。

**********************

 さらしなの里を全国に知らしめた古今和歌集の「わが心慰めかねつさらしなや姨捨山にてる月を見て」の魅力を解説する本をこのたび作りました。https://www.sarashinado.com/2025/12/12/hajimarinouta/ 慰めきれないかなしい心を癒したいとき、歌が大きな力を発揮することがあります。嘆きの歌の力について書いています。