天皇の歌とさらしなとあんず

あんず歌碑 平成の市町村合併で地図から消えてしまった地名「さらしな(更級)」。さらしなという地名に寄せられたあこがれは、日本人の美意識とも重なり、それはは「すがすがしさと躍動」という言葉に集約されます。
そんな「すがすがしさと躍動」を感じさせる天皇の和歌の一つが、昭和天皇が敗戦翌年の昭和21年(1946)の新年、歌会始(うたかいはじめ)で詠んだ次の和歌です。
 ふりつもるみ雪にたへて色かへぬ松ぞををしき人もかくあれ
 太平洋戦争の敗戦、連合国による日本占領。そんな動乱の時代、日本の原点を再確認して日本ももう一度やっていこうという願いがこめられている歌だと思います。その願いを、新しい年を祝うかのように降った純白の雪と、年中、色が不変の松の緑の葉に託しています。国も人々と同じように「すがすがしさと躍動感」から再出発しました。
同じ美意識が反映している歌が、上皇陛下にもあります。上皇陛下は上皇后陛下と一緒に2013年4月(当時は天皇皇后両陛下)、さらしなの里がある長野県千曲市に、あんずの花を見るために訪問しました。そして、上皇さまが翌年の歌会始で次の歌を詠んでいます。
 赤き萼(がく)の反りつつ咲ける白き花のあんず愛でつつ妹と歩みぬ
 あんずの花を「白き花」と表現したことに、ちょっとあれっと思いましたが、確かにあんずは、赤い萼の中に白い花びらを開かせています。和歌の「妹(いも)と歩みぬ」の「妹」は、皇后陛下のこと。ご夫婦一緒に念願の日本一のあんずの里ご訪問をかなえたことが、天皇陛下に「すがすがしさと躍動感」を与えたのは間違いありません。
上皇上皇后両陛下の千曲市訪問については次のサイトをご覧ください。   https://www.city.chikuma.lg.jp/soshiki/hishokoho/koho_kocho/1/2172.html