171号・観音石仏に見守られる「月の都」

更旅171・観音石仏・サムネイル

 この写真は数年前の暮れ、長野市塩崎地区の長谷寺の裏手の山で撮ったものです。長谷寺は観音様信仰に篤く、本堂の脇の山道を少し登ったところに、「三十三観音石仏」が鎮座しています。塩崎地区もかつては「塩崎村」で、「更級郡」を構成するひとつの村でした。
 「三十三観音石仏」からは、現在の千曲市の大半が見渡せました。向かって左端の山が「鏡台山」、右端が「冠着山(姨捨山)」です。ここからは鏡台山から上がる月と、その下で月の光を浴びる千曲川に千曲市の街並み、つまり、「月の都」の全貌を同時に見ることができます。
 長谷寺の始まりは舒明9年(637年)と伝えられ、奈良・平安の古代から都の旅人は寺域を往来したとされます。「はせ」「はつせ」という寺の呼び名が、「おばすて」と通じることから、「姨捨山」の名が当地に定着する大きな要因になったとも言われています。
 「三十三観音石仏」はそんな場所にあります。「月の都」を望み、見守るように鎮座しているのは有り難いことです。画像をクリックすると、PDFが現れ、印刷できます。